Thunderboltで何ができるのか

新型MacBook Proに搭載されたThunderboltはApple独自の技術ではなく、Intelが開発したLight Peakという高速転送技術をさらに共同開発し、名称変更して採用したものだ。全く新しいコネクタを開発したわけではなくMini DisplayPortコネクタを転用している。ケーブルは噂されていた光ファイバーではなく銅線を使用しているが、にもかかわらず公称では入出力ともに最大で10GBpsのデータ転送スピードを持つ。これがどのくらい早いのかというと、現在Macで採用されているUSB2.0が480MBps、Mac Proなどに採用されているFireWireでも800MBpsだから、そのすごさがわかっていただけるのではないだろうか?さらに言い換えれば、ブルーレイディスクのデータが30秒で転送されてしまうスピードなのだ。

また、ThunderboltはUSBと同様にデータだけでなく電力も供給でき、最大で10Wの給電能力を持つ(USB2.0は2.5W)。消費電力の大きい機器にも対応できるので、周辺機器のどれかひとつが電源ケーブルとつながっていれば、その他の機器とMacBook ProはすべてThunderboltでつながっていればいいということになる。電源ケーブルを配線する必要がなくなり、デスクまわりは今まで以上にすっきりとするだろう。Thunderboltはデータ転送技術のPCI Expressと映像出力技術のMini DisplayPortを統合した技術なので、データ転送とモニター出力と電力供給をすべて同時におこなえるようになったということだ。

ThunderboltはMini DisplayPortを転用しているが、アダプターを使うことでHDMI、DVI、VGA、FireWire、eSATA、ギガビットEthernetなどとも接続できる。さらに、Thunderboltは光ファイバーもサポートしているので将来的には、Intelいわく、最大で100GBpsの転送スピードも可能になるそうだ。

我々ユーザーにとって一番身近な使い方に置き替えると、Cinema Displayを使用する際に従来の3つにコネクタがわかれたケーブルを使う必要がなくなり、Thunderboltケーブル1本で済むだろう。また、外付けハードもiPhoneドックもUSBスティックも、すべてディスプレイと接続すれば使えるようになるので、MacBook Proには電源ケーブルとThunderboltケーブルしか接続されていない状態ですべての周辺機器が使える環境が作れる。

Thunderboltのもうひとつの利点はdaisy-chain(数珠つなぎ)に対応していることだ。例えば外付けハードを2台使用する際に、MacBook Proから2本それぞれにケーブルを配線するのではなく、MacBook Pro→外付けハード(1)→外付けハード(2)と、あいだをThunderboltケーブルでつなぐことでどちらのハードも使えるというわけだ。ただdaisy-chainは、あいだに転送スピードの遅い機器を挟むとそれ以降の機器への速度が遅くなってしまうので、接続順には注意する必要がある。

LaCie-Little Big Disk

いろいろと期待できる要素が多いThunderboltだが、残念ながら今のところ対応機器はほとんどない。各種ケーブルアダプターは順次発売予定だ。AppleとIntel以外にThunderboltへの対応を表明しているのは、ストレージメーカーではLaCie、Promise Technology、Western Digitalの3社。オーディオ機器メーカーではAja、Apoggie、Avid、Blackmagicの4社だ。

ただ、初代iMacがUSBを採用して登場した時もまだ世間にはそれほどUSB対応機器はなかった。むしろiMacがUSBを普及させる一因になったと言えるだろう。USBを上回る汎用性を持つThunderboltも同じように普及していくのではないだろうか?

ゆくゆくはSCSIやADBポートのような運命をたどり、USBが使えなくなることを危惧する方もいるかもしれないが、ThunderboltとUSBの変換アダプターを使用することでその心配は解消されるだろうし、すぐにUSBがなくなることはまずないだろう。

ただ、このThunderboltだけではAppleの理想とするコンピューティング環境は構築できないように思える。ノースキャロライナのデータセンターに始まる一連のAppleのクラウドストレージ構想はワイヤレスが前提条件のはずだ。現在Appleの製品が採用しているWi-Fi802.11nのデータ転送速度は公称で最大600MBps、実用速度はこの半分にもならないとも言われている。このギャップの解消がAppleの今後の課題のひとつになっていくのではないだろうか?

ひと昔前はギガという単位さえ耳にしなかったのに、それが今では1秒で10ギガの情報を送れる時代になった。私達が日常やりとりしている様々な情報がどんどん大容量化しているのは事実だが、Thunderboltによって私達の仕事量が余計に増えるのではなく、転送速度が速くなった分だけ仕事の効率も良くなり、つまりは早く仕事が終えられるようにならなければ、技術の進歩は私達を苦しめるだけで何の得にもならない。ウサイン・ボルトはどんなに努力しても9秒の壁は破れないだろう。人間にはどんなに頑張ってもやはり限界があるはずだ。Thunderboltを使えばあれもできる、これもできると考えるのもいいが、人間として安らげる時間を増やすことにも少し思いを巡らせてみるのもいいのではないだろうか?

参考URL:macstoriesAppleBitchCrunchGear9TO5Mac




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