なぜiOSとMac OS Xは統合しないのか?

世間にはMac OS XとiOSはいずれひとつのOSに統合される日が来るという憶測がある。次期メジャーアップデートのMac OS X LionはiOSの最高技術をいくつか盛り込んだものになるだろう、と昨年10月にAppleが発表した時には、単に両者を集約したものになるという憶測を大きくしたに過ぎなかった。

しかしAppleのこのふたつのOSは本当に統合されることはあるのだろうか?何といってもMac OS XとiOSは、今のところそれぞれうまく役割を果たしている。MacシリーズはiOSの特徴をいくつか取り入れているかもしれないが、Mac自体が決して行き詰まっているわけではない。売り上げは以前にもまして好調だ。ならば、統合することの本当の利点は何だろうか?

1月に開かれたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)において、Microsoftの最高経営責任者、Steve Ballmerはひとつの答えを提示したようだ。次期Windowsはパソコンだけでなくタブレットや(iPhoneやAndoloidフォンと同じ)ARMのチップを使ったモバイル機器でも動かせるようになるだろう、と彼は誇らしげに発表した。「消費者はますますあらゆる種類のデバイスに対応できるOSを待ち望んでいる。」と語り、AppleのOS2本立て戦略を馬鹿にしているようにも見えた。

あらゆるデバイスで動き、かつ、すべての機能を果たすデスクトップ用のWindows構想はいささか問題をはらんでいるように見える。Excelのスプレッドシートを編集するために、本気で自分のモバイル機器にマウスをつなげようとする人など誰もいないだろう。モバイル機器はパソコンよりもはるかに小さく、ユーザーにはそれに特化したシンプルなインターフェイスが不可欠で、必然的にパソコンよりも機能は少なくなる。たとえWindowsがあらゆるデバイスで動かせたとしても、ユーザーインターフェイスはそれなりの対応が必要になるだろう。

今回のWindowsの構想をAppleの戦略と比較するとどうだろう?現時点ではMicrosoftにはふたつのWindowsのプラットフォームがある。ひとつは従来のパソコン向けWindows NTで、もうひとつは(タブレットやモバイルフォンのような)小さいデバイス向けのWindows CEが基になっているもの。次期WindowsはNTを基本にして、このふたつを合体させたものになるに違いない。対照的にAppleのふたつのOSはすでに同じ技術を基本につくられている。同じOS Xカーネル(中核)を使いわけ、iOSのCocoa TouchフレームワークはMac OSのCocoaフレームワークを受け継いだものだ。言いかえれば、ARMのチップ上に置きかえることで、最初のiPhoneを登場させた4年前のAppleの状況に、Windowsはただ追い付いたに過ぎない。

ただ、どう見てもMacシリーズとiPhoneがすでに同じOSで動いていると言うことができるのであれば、iOSとMac OS Xの統合という憶測はどう片付ければいいのか?この問題を解き明かすには両者の類似点よりも相違点に注目してみる必要があるだろう。Mac OSとiOSには主にふたつの違いがある。

・ユーザーインターフェイス

iOSはタッチスクリーン入力が基本なのに対して、Mac OS Xはマウスやトラックパッドによるポイントアンドクリック入力が基本になっている。

・CPU構造

iOSはARM、Mac OS XはIntelが基本になっている。

もし両者を統合させるのであれば、これらの違いをうまくすり合わせなければならない。果たして可能なのか?それぞれ考えてみよう。

・ユーザーインターフェイス

どのように、あるいはなぜ、ふたつのユーザーインターフェイスを統合するのか答えを出すのは難しい。タッチスクリーンにはポイントアンドクリックとは全く違うユーザーインターフェイスが必要だ。iPadのインターフェイスはMacのインターフェイスにほぼ間違いなく似ている。両者にはコンピューターの相互作用という点でふたつの相いれないパラダイムがある。それは自分の使うデバイスの構成要素によって決まるものと、作業内容のふたつだ。

・CPU構造

IntelのCPUは高価でサイズが大きく、熱を持って消費電力も多い。一方でARMのチップはAppleのA4チップのように安価で小さく、熱も持ちにくく低消費電力だ。iPhoneやiPadがいつでもすぐにIntelに移行するということはないだろう。しかし、MacシリーズへのA4チップ搭載の実現というのはかなり興味深いものだ。電池寿命が延びてより薄くて軽くなったMacBook Airや、新しいApple TV並みのサイズと価格のMac miniの姿を想像してみてほしい。

AppleはCPU構造に関して今までかなり気まぐれだった。我々は二度のMacシリーズの大転換を目の当たりにしている。最初が68KからPowerPC、次がPower PCからIntelへの転換だ。この二度の転換は非常にシームレスに進められ、間違いなく今までのアップル史における偉大な技術的業績のひとつと言える。開発者達は新しい構造にアプリを移植しなければならないので不平もあるだろうが、ユーザーに対する高額なアップグレード料金を大幅に合理化する機会をAdobeのようなメーカに与えたことなども含めて、大半はかなりうまく対応していたのではないだろうか。

もちろん、PhotoshopやFinal Cut Pro、LogicなどのユーザーはいつでもすぐにARMベースのMacに乗り換えるということはなかなかできないだろう。ARMにはこういったプロ仕様のアプリに対応できる程の充分な能力がまだない。しかし大半のMacユーザーにとっては、価格やサイズ、電池寿命などの面での利点はかなり魅力的な選択肢になるだろう。ARMベースのMacはさらに、タッチスクリーン入力とポイントアンドクリック入力の切り替えが可能な、デュアルモードデバイスという非常に興味深い可能性も秘めている。例えば、iMacからコードを抜いて大きなタブレットとして使えるようにしたり、MacBook Airを裏側に折り返してiPadのように使ったりということだ。このようなデバイスであればアプリの移植の必要なくMac OSとiOSのどちらのアプリも使えるようになる。

両OSの統合を予見する評論家の中にはふたつが合成されたユーザーインターフェイス、つまりタッチ入力を基本としてポイントアンドクリック入力も装備したものをイメージしている場合がある。私にはそれはあり得ないように見える。もしAppleがタブレットにMacのユーザーインターフェイスを対応できると考えているとしたら、最初からiPadにiOSではなくMac OSを搭載したのではないだろうか?しかし、タッチスクリーン入力かポイントアンドクリック入力かのモード切り替えが可能で、iOSとMac OSの両方のアプリが使用できるというデュアルモードデバイスには非常に興味深い可能性が感じられる。その上、より安く、より小さくなったA4チップ搭載のMacが登場すれば、Macの人気は今まで以上に高まる可能性があるだろう。

参考URL:Cult of Mac




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